住宅に住み着き、糞尿の匂いや騒音で住人を困らせるハクビシン。なぜ自分の住んでいる家が狙われるのだろう?と疑問に思っている方も少なくないはずです。
通常、ハクビシンは餌場に近いエリアの家をねぐらとして使います。つまり、天井裏に巣穴を作られた場合、建物の近所にエサとなる食べ物があるということです。
そのため餌場からハクビシンを追い出すことができれば、自然と屋根裏の被害もなくなります。では、ハクビシンのエサとして狙われやすいのはどんな食べ物なのでしょうか?
今回はハクビシンの好物となる食べ物と食害の対策方法、好物を利用したハクビシンの捕獲方法について詳しく解説します。
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ハクビシンの好きな食べ物
ハクビシンは雑食性の動物です。食べられるものであればその辺りの虫から小動物、農作物までなんでも口にします。
しかし、大食いである彼らは同時にかなりのグルメ。美味しい食べ物をよく知っており、餌の種類が豊富な場所であれば好みのものから狙います。
ここではハクビシンが優先的に食害する食べ物をご紹介します。
果物
ハクビシンは甘党です。被害額が最も大きいのは甘く熟した果物。
農林水産省の資料「ハクビシンの基礎知識」平成18年度の統計では、ハクビシンの食害のうち、およそ7割が果物の被害となっています。
また果物の中でも好みがあり、とりわけ大好物なのはとろけるほど甘く熟した柔らかい果実です。具体的には以下の果物が該当します。
- ブドウ
- ミカン
- バナナ
- イチジク
- イチゴ
リンゴやナシなど歯ごたえのある果物も好きですが、餌を選べる環境にいれば優先度はやや下がります。
野菜
果物と同じで、野菜も甘いものを好みます。よく狙われるのはトウモロコシです。特にスイートコーンが大好きで、出荷間近のコーンを斜めに引き倒し、甘い粒を残らず綺麗に食べてしまいます。
トウモロコシの他、トマトも糖度の高い品種はよく狙われます。
鶏肉
意外かもしれませんが、ハクビシンは鶏肉も好物です。農家や畜産業者の鶏舎に侵入し多大な被害を与えたという報告も見られます。
ハクビシンの糞にはニワトリを始めとする鳥類の羽や骨がしばしば見つかっており、餌場にできる鶏舎があると優先して狙うことが分かっています。
ハクビシンによる食害対策
ハクビシンの好物を取り扱っている場合、せっかく作った農作物を荒らされてしまうことも少なくありません。畑を食害するハクビシンを追い払う場合、その対策は大きく分けて二つ存在します。
- 警戒心を利用した製品を使い忌避効果を狙う
- 電気柵で物理的に侵入を阻む
それぞれ詳細を解説していきます。
忌避剤で対策する
ハクビシンなどの害獣動物に対する忌避剤と呼ばれるものは、主に嗅覚に訴えて警戒心を揺さぶるものです。ボトルやスプレーで販売されており、侵入経路や被害のある畑・家庭菜園などに散布して侵入を防止します。
害獣避けに広く利用されている木酢液などの他、天敵の尿を原料にすることでハクビシンの恐怖心を煽る製品など様々なバリエーションがあります。
また、ハクビシンが嫌う臭いを出すものは家庭にもあり、ニンニクの汁や灯油などを利用して自作することも可能です。忌避剤の効果やオススメの製品については、以下の記事で詳しく解説しています。
超音波装置で対策する
人間に聞こえない音域の超音波を流し、大音量で脅かしたり、不快音で追い払ったりするタイプの装置もあります。こちらも侵入経路や食害場所に設置することで効果を発揮します。地面に挿して固定したり、屋根から吊り下げて利用したりと場所に合わせた方法で設置できるのがポイントです。
複数の周波数を切り替えられるものや、フラッシュライトで視覚への威嚇とのダブル効果を期待できるものなど、種類がいくつか存在します。
デメリットとしては、ペットのいる家だと使いにくいということでしょうか。詳しい使い方や使用上の注意など、以下の記事で詳細をご紹介しています。
電気柵を設置する
忌避効果を狙っても解決できない場合や、ハクビシン以外の動物にも狙われているようなとき、最後に検討するのがこの電気柵となります。電気柵は、畑の周りにポールやネットを設置し、そこに電線を張り巡らせて害獣を感電させることで侵入を阻むというもの。
ハクビシンは電気ショックを非常に嫌い、一度感電すると一週間は電気柵に近寄ろうとしません。そのため効果は抜群なのですが、忌避剤や超音波装置と異なり、設備がどうしても大掛かりになります。気軽に試すことができないので、家庭菜園には不向き。どちらかというとプロの農家向けの対策でしょう。
好物を利用してハクビシンを箱わなで捕獲する
ハクビシンの対策を追い払うということに限定しないのであれば、好物を利用して罠で捕獲することも選択肢に入ってきます。
通常、罠の使用には動物愛護法で定められた狩猟免許が必要です。また、普段馴染みがないと罠を使って捕まえるのは心理的ハードルも高いかもしれません。
ですが、家や畑の被害を防止するための罠の設置は、意外と簡単にできます。ここではハクビシンを罠で捕まえるには必要な免許・罠の仕掛け方をご紹介します。
ハクビシンの捕獲と鳥獣保護法の規制
ハクビシンは、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護法)で保護されている狩猟鳥獣です。狩猟としてハクビシンを取るには免許が必要な上、猟具や猟期など、細かいルールを守っての実施が求められます。
しかし、ハクビシン被害が深刻化している自治体では、畑や家屋の被害を防止する目的に限り、狩猟免許がなくとも箱わなでの捕獲を許可している場合があります。
田舎では、増加する害獣被害に市町村による対策が追いつかず、住民自身での駆除を推奨し、箱わなの無料貸出をおこなっていることもあります。無料貸出を検討されている方は、お住いの自治体の環境局か、鳥獣保護担当部署までお問い合わせください。
また、鳥獣保護法と狩猟免許の規定については、以下の記事で詳しく解説しています。
箱わなはどんな種類があるのか
箱わなには「踏み板式」と「吊り餌式」の二種類があります。
踏み板式は、罠の奥に設置した餌で害獣を誘導し、仕掛けにつながった板に害獣の体重がかかると入口が閉まります。
吊り餌式の箱わなは、箱の内部にフックのような仕掛けがあり、箱に入った害獣が手や口でフックを引っ張ると蓋がされます。
ハクビシンは踏み板式の罠が作動する程度の体重があり、手でフックを引っ張ることもできるので、どちらの罠を使用しても良いでしょう。中型動物用のものであれば10,000円〜30,000円程度で購入できます。
箱わなの使い方・設置方法
箱わなの設置で注意すべき点は、餌の選び方と罠の設置場所です。
ハクビシンは柔らかく熟れた果実が大好物だと記載しましたが、柔らかすぎると箱わなの外から網目に手を入れ、無理やり餌を取られてしまうことが考えられます。また吊り餌式の場合、柔らかい餌はハクビシンが引っ張ったときに千切れて仕掛けが動かない可能性があります。
これを踏まえた上で、ハクビシンの好物から餌を選ぶのであればミカンがオススメです。皮は剥かず、そのままフックに引っ掛けるか、箱わなの奥に置いておきます。中の実が熟れていても皮自体にそれなりの強度があるので、千切れたり崩れたりする心配はないでしょう。
箱わなの設置場所ですが、高いところに設置すると落下してきたときに怪我をする危険があるためおすすめできません。また、箱わなは平面に設置しないと仕掛けがうまく作動しないことがあります。天井裏のハクビシンを捕獲するために侵入経路である屋根に設置したいところですが、不安定の屋根では捕獲の確立が下がります。
箱わなの設置におすすめなのは以下のような場所です
- 雨どいや庭木の下
- 隙間のある屋根の軒下
- 床下
- 通風口のそば
こちらは一例ですが、他にもハクビシンの侵入経路や、足跡が付いている場所であれば効果が期待できます。ハクビシンは夜行性ですので、夜に設置しておきましょう。
まとめ
以上、ハクビシンの好物となる食べ物と食害の対策方法、好物を利用したハクビシンの捕獲方法についてご紹介しました。
住居や農作物に被害を及ぼすハクビシン。業者に依頼しないと駆除は難しいと思いがちですが、好物を利用して罠で排除し、忌避効果で定着を防ぐことができれば、個人レベルでもハクビシンの根絶は可能です。
忌避剤はインターネット通販でも販売していますし、箱わなも自治体に相談すれば無料貸出を受けられる場合があります。ハクビシンの被害でお困りの方、一度ご自身での駆除に挑戦してみてはいかがでしょうか。